2025/11/24
未経験から生成AI講師へ。元アナウンサーによるSNS活用とキャリア戦略ー生成AI講師幸川莉子

地方テレビ局のアナウンサーからパソコンメーカーのテストエンジニア、そして生成AI講師の道へ。幸川莉子さんの、一見バラバラに見える異例のキャリアの根底には「新しい技術を伝えたい」という一貫した想いがありました。
妊娠によるキャリアの中断を経験しながらも、2022年11月30日、ChatGPTとの出会いが新たな扉を開きます。
現在は0歳と3歳のお子さんを育てながら、生成AI講師として企業研修やイベント司会を担当。AIを活用した話し方レッスンも展開する幸川さんに、キャリアの変遷やAIへの想い、日々のAI活用術についてお聞きしました。
未経験からAIの仕事へ。キャリアの壁を突破したSNS活用
ーーまずは幸川さんのキャリアについて教えてください。
キャリアのスタートは、地方テレビ局のアナウンサーでした。もともと「ニュースを伝えたい」という想いでこの仕事に就いたのですが、当初は「ニュース」というものが自分の中では抽象的でした。
ただ、毎日事件や事故などさまざまな現場を取材する中で、「私が本当に伝えたいのは、聞いている方が未来に希望を持てるニュース」であり、それは「新しい技術」のことだとはっきり気づいたんです。
学生時代にエンジニア講座の司会をしていたこともあり、技術には当時から興味がありました。アナウンサーになってからも、新しい技術を取り入れた現場からリポートする機会もあり、「技術の現場を知って体感したい」という好奇心がどんどん強くなっていったんです。
そこで、未経験でパソコンメーカーのテストエンジニアへ転職をしました。

ーーアナウンサーからテストエンジニアへ、大きな転身ですね。その後はどんな歩みを?
夫の転勤でテストエンジニアは退職しました。そして今度は、検証だけでなく開発も経験したいと考え、プログラミングスクールに通いました。
ただ入学直後に第一子を妊娠して。「妊娠悪阻」と診断される重いつわりに悩まされ、スクールは卒業できたものの、転職活動がうまくいかなかったんです。キャリアが閉ざされてしまったように感じていました。
とはいえ、どうしてもキャリアを諦めたくない。そんな想いを抱いていた2022年11月30日、ChatGPTに出会いました。今でもハッキリと日付を覚えています。当時ITビジネスのパーソナリティの活動をしており、自分でニュースを読む中で知りました。
ーーなるほど。ニュースを読む立場だからというのもあり、リリースと同時に知ったのですね。
そうなんです。その後ChatGPTを自分で触ってみて、衝撃を受けました。開発者としての転職に挫折した私でも、ChatGPTを使えばアイデアをコードに変えることができる。それに、それまで手作業で行っていた文書の叩き台が一瞬で生成できたことにも驚きました。
「これは、まさしく未来に希望を持てるニュースであり、新しい技術だ」「もっと伝えていきたい」
そんな想いとともに、私の可能性も広がった気がしました。
その後は見事にAIにハマりました。いつも新しいことに触れていたいという欲求を、AIは進化が早いからこそ満たしてくれる。好奇心が刺激され楽しいんですよね。
ーーその後は、どのようにAIの仕事に繋がっていったのでしょうか?
さまざまなAIツールに触れる中でできたことや気づきなどを、公開メモとして残す感覚でXにポストしていました。
すると、AI業界の方から声をかけていただくことが増えていきました。元アナウンサーとして様々なイベントに登壇したり、Women AI Intiative Japan(以下、WAIJ)のオンラインイベントで講師として登壇する機会もいただきました。元アナウンサーということ自体がAI業界的には珍しく、覚えてもらいやすかったかもしれませんね。

個人事業主の生成AI講師として、AIの便利さを語るだけでなく、AIの限界やその上で何がベストだと考えているかを合わせて伝えるよう気を付け、次に繋げていきました。同時に、AIを学ぶ方との交流や縁が私のキャリアチェンジを後押ししてくれたように思います。
一方で、個人での生成AI普及には限界を感じていました。組織に所属している方の悩みには答えきれなかったり、一人で解決できることには限界もあって。そこで、個人事業主の時から縁のあった、生成AIのプロフェッショナルが集うシンシアリー株式会社に社員として入社し、生成AI講師として働くことになりました。
未経験かつアナログな異業種からのキャリアチェンジですが、SNS活用や交流からチャンスを掴み、信頼を積み重ねることができたからかなと思っています。
AIは、自分ができることを最大化してくれるパートナー
ーー現在お仕事で、どのようにAIを活用されているか教えてください。
まず、生成AI講師としての講座制作で活用しています。短納期で講座を作る時、理想の構成を言語化してAIに渡すことで、構成案や資料の叩き台を一気に形にしてもらえます。特にワークショップ用のダミーデータを一瞬で作ってもらえるのは、すぐに検証に入れてとてもありがたいですね。
他にも、アナウンサーとしてAIイベントの司会をしたり、ビジネスパーソン向けにAIを活用した「話す力」を鍛えるレッスンを行ったりしています。その中で、イベントの司会原稿の作成などにも活用していますね。AIに手伝ってもらうことで準備の「速度」と「質」が上がり、一番大切な「どう伝えるか」という部分に時間を割けるようになりました。
ーー現在、3歳と0歳のお子さまを子育て中だとか。プライベートでのAI活用はいかがでしょうか?
もちろん使っています。最近は、子ども用の指差しアプリを作ってみました。「りんごはどれだ?」と問題を出して、正しいアイコンを選ぶと次に進むものです。手軽に子供の成長に合わせたゲームが作れるのは便利ですね。
家事をしている最中にAIを使った音声入力をして、後で文字起こしでまとめることもあります。手が塞がっている時、音声入力はとても便利なんです。子どもが大きくなったら、一緒にAIで絵本作りをしたいなと思っています。

ーー幸川さんにとって、AIはどのような存在でしょうか?
「適切に使えば、自分ができることを最大化してくれるパートナー」だと考えています。
従来のITツールだと、知らない分野について1から学ぶのには時間がかかります。一方AIは、知らない分野でも詳しく説明してくれる。だからこそ、知識やできることを少しずつ増やしていけます。
もし自分の専門分野であれば、手掛かりとなる思考回路をたくさん持っているので、そこから問いを与えてれば、さらに広く深く思考を形にすることができる。AIは、自分の力を最大化してくれますね。
AIが当たり前になる時代に、話す力を鍛えて人とのコミュニケーションを磨く
ーー今後は、AIを活用してどのようなことを実現していく予定でしょうか?
まず、生成AI講師としてAIを広める活動を続けていきたいと考えています。
また、そうした「伝える」軸と同時に、自分自身もAIを使ってキャリアの可能性をもっと広げていきたいですね。
具体的には、「話す力」を鍛えるレッスンの中でβ版として展開している、「話す力評価システム」を、AIを活用してブラッシュアップしていく予定です。こちらは、東京都のアクセラレーションプログラムである「RAISE HER」で、講義やメンタリングを受けながら開発を進めました。より精度が高いシステムにして、今より多くの方にお届けできるようにしていくつもりです。

ーー「話す力評価システム」について、具体的に教えてください。
スマートフォンやパソコンのマイクに向かってフリートークと原稿読みを行い、簡単な設問に答えることで、話す目的・構成・音声表現を分析。次に取り組むべき改善点を可視化するシステムです。
これからは、AIが当たり前になる時代。私も、日々仕事と家事と子育てに追われていますが、AIを使うことで、作業の質を高めた上で効率化できると考えています。
作業を効率化すると時間が空きます。では、空いた時間をどのように使うのか。
私は、「人とのコミュニケーション」に力を注ぎたいと思っています。その際必要不可欠なのが、「話す力」「言葉にする力」。だからこそ、話す力を鍛えるために、「AI×話す力」のスキルアップ支援を行ったり、システム開発をしています。将来的には、このシステムを通じて、人々のパッションや知見が埋もれずに社会に届く世界を作りたいと考えています。
ーー最後に、Women AI Initiative Japanに参加したい女性へのメッセージをお願いします。
「AIの魅力はなんとなく分かったけれど、どう学び始めればいいかわからない」
Women AI Initiative Japan(WAIJ)は、そんな方々がキャリアの可能性を広げ、学びを継続する場として役立てていける場だと思います。
私も、WAIJが運営するワークショップの講師として参画しています。どこかでお会いできることを楽しみにしています!

わたしのAIライフスタイル診断
ーー「AIライフスタイル診断」の結果と感想を教えてください。
「しなやかバランサー鹿」タイプでした。
確かに、バランスはとても大切にしています。ただ、そのバランスは、その時々で揺らぎがあるものだとも思います。子どもが熱を出したら家庭優先。仕事の頑張りどきは仕事優先など、その時々に合わせた心地良いバランスをこれからも大切にしていきたいです。
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Women AI Initiative Japanは、AI時代を生きるすべての女性が自分らしくキャリアを築き、可能性を広げるためのコミュニティです。最新のAI活用事例やキャリアストーリーを共有し、共に学び、成長する場を提供しています。
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執筆・編集 Naoko Kubota 撮影・山内章啓




