「やるかやらないか」──ハヤカワ五味が見据える、すべての女性が"自分の人生を経営する"ためのAI活用戦略

18歳で起業後、10年間で2社を創業し、アパレルやフェムテックなどのD2C領域で経営者として活躍してきたハヤカワ五味さん。2024年7月、異例のキャリアチェンジでメルカリに転職し、生成AI推進担当として新たな挑戦を始めました。

「女性の働き方を変えるかもしれない」──2023年にChatGPTを触った瞬間の衝撃が、このキャリア転換の原点だったといいます。「誰かの選択肢を照らす」ことを活動の根幹に据え、Podcast『ながらAI』の配信や『女オタ生成AI部』の運営など、女性が生成AIに親しみやすい場づくりにも取り組むハヤカワさんに、AI時代のキャリア戦略と、すべての女性へのメッセージをお聞きしました。

<プロフィール>
株式会社メルカリ AI Strategy ハヤカワ五味

18歳で起業後、ランジェリーブランド『feast』、フェムテック事業『ILLUMINATE』など、多数の事業を展開。2022年3月にはユーグレナグループにグループインし、はたらく女性向けの新規事業開発に取り組む。24年4月に退職後、生成AI関連の推進担当としてメルカリに入社。生成AIの利活用に関してSNSでも積極的に発信している

キャリア戦略としての「生成AI」──なぜ今、ゼロから「会社員」を選んだのか

ーーこれまでのキャリアについて教えてください。

18歳で学生起業し、そこから10年ほど自分で会社経営をしていました。元々ものづくりが好きで、最初に立ち上げた事業は胸が小さい人向けのランジェリーブランド『feast(フィースト)』でした。

その後、2019年に2社目となるフェムテック領域の事業『ILLUMINATE(イルミネート)』を立ち上げました。現在は2つの事業ともイグジット済みで、2024年7月からはメルカリに転職し、会社員として社内で生成AIの推進などを担当しています。

ーー10年間経営者をされてから会社員に転身するのは、異例のキャリアチェンジですよね。その選択の理由は何だったのでしょうか?

2023年にChatGPTが国内で話題になって自分も触ってみたときに、「インターネットやスマートフォンが初めて登場したときのように、大きなゲームチェンジが起こりそう」と直感しました。

私はこれまでも市場の需要と供給のバランスを見極め、自分の強みを活かせるポジションに身を置くことを意識してキャリア選択を行ってきました。リスクを恐れるよりも、先行者利益を重視する。早い段階でその領域に飛び込んだ方が、市場の拡大とともに自分のポジションも自然と優位になっていくからです。

そう考えたとき、「今このタイミングで生成AIに携わることが、自分のキャリア戦略においてベストな選択だ」という結論に至り、生成AIを仕事にすることに決めました。

ーー「生成AIに携わる」キャリアの中でも、起業ではなく『メルカリ』という大企業を選んだ理由を教えてください

今のタイミングで私がゼロから起業するよりも、豊富なデータや資産を持つ既存組織をAI対応させる方が、現実的かつインパクトが大きいと判断しました。

また、私はエンジニアではありません。なので、技術を自ら開発するのではなく、組織全体にAI活用を浸透させる「推進役」こそ、自分がバリューを発揮できるポジションだと考えました。そう考えると、大企業で会社員として働くことが、最も自分の強みを活かせる選択だったんです。

AI時代の女性起業──「完璧」よりも「まず出してみる」

ーーこれからAIを活用したいと考える女性へ、最初の一歩として何をおすすめしますか?

「情報収集しなくていい。とりあえず使ってください」と伝えたいですね。例えるなら、1日2500キロカロリー摂取しても体が吸収できなければ意味がないのと同じで、経験という土台がない状態で情報を入れてもスルーしてしまうんです。

自分で手を動かしてみて初めて、「あ、本に書いてあったのはこのことか」と解像度が上がる。だから、勉強する暇があるなら、とりあえずAIで何か一つ作って出してみるべきです。

今なら例えば『Lovable』というツールを使えば、バックエンドやセキュリティも含め、30分でサービスが作れます。開発コストが劇的に下がった今、完璧を目指さず「とりあえず出す」という姿勢が重要です。

ーーとはいえ、女性は完璧主義な方も多く、100%以上できないと手を挙げられない方もいらっしゃいますよね。

それはありますね。でも生成AIの利活用においては、むしろ一般的に「コミュニケーションが得意」といわれる女性ほどチャンスがあると私は思ってます。

プログラミング言語ではなく自然言語、つまり普段使っている言葉で指示が出せるようになった今、「お話するのが好き」「言葉を扱うのが得意」という特性が、そのままエンジニアリング能力に直結する時代になりました。

ーー起業経験が豊富なハヤカワさんから見て、AIの登場によって女性が起業するハードルは下がったと感じますか?

確実に下がったと思います。先程挙げた『Lovable』のようなツールを使えば短期間で開発が可能ですし、開発コストが下がることで資金調達のハードルも低くなります。

大切なのは、最初から完璧を目指さないこと。「10個出して1個当たればいい」という感覚でまずやってみることですね。いきなり大規模なグロースを狙うのではなく、まずは特定の人に深く刺さるものを作り、検証してから広げていく。そして、売上が立ってから人を雇う。それがAI時代における基本的な起業スタイルになると思います。

「意志(WILL)」さえあれば、誰でも人生を経営できる

ーー様々な活動をされているハヤカワさんの、今後のビジョンについても教えてください。

「女性の、ひいては全ての人が選べる社会」を目指しています。

私は物心ついた頃から「妊娠・出産で仕事を休まなければいけないこと」を受け入れられず、ずっと妊娠・出産する側の性別に生まれたことをネガティブに捉えていました。

そんな中、2023年の初めにChatGPTを触った際、「これゲーム作れるじゃん!」という喜びと共に「これは女性の働き方を変えるかも」という衝撃がありました。だからこそ、いつか絶対に仕事にしようと、その時から決めていました。

生まれた時から違和感を持ち続けている「女性」というジェンダーを起点として、全ての人に選択肢が開かれている状態を実現したいと考えています。

ーー「すべての女性がAIで、その先へ」をミッションとするWomen AI Initiative Japanとも通ずるビジョンですね。

実際、ChatGPTをはじめとした生成AIツールは、各種調査で「男性と比べて女性の利用率が有意に低い」ことがわかっています。生成AI関連のイベントに参加しても、かつての「起業家向けイベント」のような雰囲気で、とにかく男性ばかり。正直、自分が歓迎されているようには思えませんでした。

だからこそ、自分自身が率先して生成AIの発信者となり、「生成AIを仕事にしている女性がいる」という事例を世の中に届けるようにしています。なるべく気軽に生成AIについて知ってもらえるよう『ながらAI』というPodcastを毎週配信したり、『女オタ生成AI部』など女性が親しみやすいコミュニティも展開しています。

起業家時代から現在に至るまで、私の活動の根幹には常に「誰かの選択肢を照らす」という想いがあります。誰かの不安や閉塞感を和らげ、多くの人の未来に少しでも光を届けられるよう、今後も活動を続けたいですね。

ーーWomen AI Initiative JapanのメンバーやAIに興味がある女性へ、メッセージをお願いします。

テクノロジーが進化した今、資金や技術がなくても誰でも短期間でプロダクトを作れるようになりました。だからこそ、最後に問われるのは「やるかやらないか」という人間の意志(WILL)のみです。意志(WILL)さえあれば、人生は経営できます。

私自身も会社員をやりながら、インフルエンサーとしてメディア出演やセミナー登壇をしつつ、個人のプロジェクトとして2025年内に2つサービスをリリースする予定です。私ですらやってるので、みなさんにできないはずがありません。

「時間がない」といった言い訳もできないので、厳しい時代ですよ。あとはやるか、やらないか。やってやりましょう!


Women AI Initiative Japanは、AI時代を生きるすべての女性が自分らしくキャリアを築き、可能性を広げるためのコミュニティです。最新のAI活用事例やキャリアストーリーを共有し、共に学び、成長する場を提供しています。

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執筆 平 理沙子/編集 Naoko Kubota