「30代の迷いは3回来る」AI時代を生き抜く女性リーダーのキャリア論 ーパーソルテンプスタッフ執行役員CIO朝比奈ゆり子

パーソルテンプスタッフ株式会社の執行役員CIOを務める朝比奈ゆり子さんは、早い段階で社内版GPTの導入を推進。保守的な社内部門を計画的に巻き込みながら、組織全体のデジタル変革を牽引してきました。

AI活用を「ためらっているだけ、もったいない」と語る朝比奈さんに、AI時代に人間に残る仕事、変革を推進するためのリーダーシップ術、そしてキャリアに悩む女性へのメッセージをお聞きしました。

パーソルテンプスタッフ株式会社 執行役員 CIO 朝比奈ゆり子

外資系プロジェクトマネジメントソリューションベンダーにてプロダクト開発、導入を中心に担当。外資系ITセキュリティ会社2社でコーポレートIT部門のリーダーシップを執った後、2014年にインテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。2021年よりパーソルホールディングス グループデジタル変革推進本部 本部長としてグループ全体のデジタル変革を推進。2025年より現職。2024年度(第42回)「IT賞(マネジメント領域)」受賞、第9回「HRテクノロジー大賞人的資本経営部門」優秀賞、「JAPAN HR DX AWARDS 2024 特別賞」を受賞。

AI導入の壁を突破。保守的な部門を巻き込むリーダーシップ術

ーーパーソルグループでは、2023年という比較的早い段階で社内版GPTを導入。朝比奈さんが推進されたとお聞きしましたが、当時の経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか

2023年始めに、ChatGPTを見て「これはまずい」と思ったんです。それまでのAIは、一部の専門家しか触れないシステムの奥にいる存在でしたが、ChatGPTはブラウザで、しかも全言語で使えるという衝撃がありました。

「事業としてAIに携わらないと、変革が起きた時にマーケットから追い出されてしまうかもしれない」

そんな強い危機感を持ちました。当時はまだAI活用に慎重な雰囲気が漂っていましたが、この流れを放っておくと乗り遅れる。「だったらグループの中で、私が進めよう」と腹を決めました。

ーー推進にあたり、社内には保守的な部門もあったのではないでしょうか。

そうですね。ただ、ノーと言わせなきゃいいんですよ(笑)

未知のものに対して、法務部門は「イエス」と言いづらいもの。そこで、まず技術的な環境を整える準備をしました。当時は自作するしかなく、Azure OpenAI Serviceを使ってAPI連携する形を模索しました。法務部門には最初から一緒にガードレールを作ってほしいと依頼し、セキュリティ担当者も推進チームに入れ、安心安全な環境を共に作りあげました。

経営層とのコミュニケーションも重要でしたね。経営層が集まる勉強会などで生成AIが話題になった時、「リスクはコスト」だと正直に伝えつつ、「利用者を限定し、月額リミッターを設けて検証を進めます」という具体的なプランを示すことで、経営層も「ノー」とは言いにくくなります。

また、経営層向けに「朝比奈メルマガ」を毎月欠かさず発行し、世の中で起きているAIのトレンドを、専門的すぎず、読んでもらえるような面白いコンテンツで発信していました。例えば、漫画のキャラクターが戦うシミュレーションなどです。「やらないとダメなんですよ」と、じわじわ圧をかけていた感じですね(笑)。「朝比奈が言い出したら仕方ない」という形にしていくのがコツだと思います。

AI活用は、自分や仕事をブーストする武器になる

ーー現在、朝比奈さんご自身はAIをどのように活用されていますか。

個人としては、壁打ちを含めて汎用GPTを何種類か使っています。また、MicrosoftのCopilotはオフィスツール周辺で一番活用していますね。

組織としては、「ウェットに人間がやった方がいいところ以外は、なるべく全部の業務プロセスにAIを入れていく」ことを練り込んでいる最中です。

人材サービス業で言えば、やはりマッチングの最終局面は人間がやった方がいいですね。AIは、事前調査や可能性を開くところまでは補完できます。けれども、最終的に「ここに応募しませんか?」と背中を押すとか、キャリア相談の場で共感するといった「最後の一押し」は、やはり「人間がやるべき領域」として残るのではないでしょうか。AIは、感情的なサポートはできないと考えます。

ーーAIと人間の融合ですね。では、AI活用に対して一歩進めない女性に対し、アドバイスはありますか。

「ためらっているだけ、もったいない」と思います。

ECサイトでのショッピングやSNSの画像加工など、女性はすでに日常生活の中でAIに触れているはず。AIは、これまで難しかったことを可能にする「便利なツール」です。

まず、個人の手が届く範囲でやってみるのが良いのではないでしょうか。業務でいきなり使うとなると、会社のセキュリティルールやコストがネックになるので、プライベートで試すのがおすすめです。例えば、私はAIの英会話アプリを使っていますが、AI相手なら恥ずかしくないですし、隙間時間で学習ができます。しかも安価ですしね。

AIは、問いを立てる力があれば、専門家並みのリサーチを一瞬でできる「武器」です。自分が得たいことへのショートカットになります。資料作成も時間短縮できますし、映画や音楽制作などでも、やりたいことを実現できるレベルにかなり近づいています。まさに、年齢に関係なく、自分をブーストしてくれるツール。2Dで描いていたキャラクターを3Dにできるのも、非常に嬉しいことですよね。

今ならまだ、多くの人が同じスタートラインにいるので全然間に合いますよ

「30代のキャリアの悩みは3回来る」AI時代は、失敗を恐れずピボットする

ーーキャリアに悩む女性も多いですが、朝比奈さんはいかがでしたか?

私も、30代前半で年俸が大きく下がり、次の年にもまた下がるなど、「もうダメだ...」と落ち込んだ時期がありました。迷い過ぎて、色んなものに手を出しましたし、失敗もたくさんしてきました。でも、そこで真剣に取り組んだことはすべて経験となり、今の自分を形作っています

現在は、迷いながら「ピープルマネジメント」に挑戦し続けています。プロジェクトを成功させることとは違い、ピープルマネジメントは一筋縄ではいかないですからね。みなさんも、どうか挑戦や失敗を恐れないでください。

そして、私はよく「30代のキャリアの悩みは3回来る」と伝えています。33〜34歳で一度「これでいい」と思えても、36〜38歳でまた迷いが来て、40歳手前でもう一度来る。だから、大丈夫です。キャリアに迷わなかった人なんて誰もいません。苦しんできたからこそ、乗り越えられます。どうぞ安心して、今の悩みに真剣に取り組んでくださいね。

ーー最後に、Women AI Initiative Japanに期待することをお聞かせください。

「すべての女性が、自律的に人生を選択できる社会の実現を推進する」という理念は、本当に素晴らしいと思っています。

AIは小難しいことではなく、楽しんでやればいい。そして、より自分らしいキャリアやライフスタイルを、自身の意思で決めていくための武器となるものです。

どんな職業も永遠ではなく、必要なスキルは常に変わります。定期的にピボットする時代であり、AI時代においては「問いを立てる力」と「仮説検証能力」といったマインドスタンスが、究極のポータブルスキルになります。

これからも、AIという新しい武器を使って女性がより良い未来を自分で切り拓けるよう、明るいメッセージを発信していただけたらと思います。

わたしのAIライフスタイル診断

ーー「AIライフスタイル診断」の結果を教えてください。

心地ワーク羊でしたが、相当に当たっていると思います。

理想や達成感を大事にしつつ無理をしない、快適さを重視した働き方を好んでいるなど、ズバッとまとまっています。おすすめの「リズム守護AI」活用を日々の相棒にしようと思います。

Women AI Initiative Japanは、AI時代を生きるすべての女性が自分らしくキャリアを築き、可能性を広げるためのコミュニティです。最新のAI活用事例やキャリアストーリーを共有し、共に学び、成長する場を提供しています。

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取材 Cynthialy株式会社 執筆・編集  Naoko Kubota