二度のキャリア中断と、豊富な海外経験から。「AIで、日本の長時間労働を是正したい」—AIコンサルタント 秋元かおる

国際協力への想いからIT業界へ入社し、WEB開発やITコンサルタントとしてキャリアを積む中、JICAボランティアとしてコロンビアへ渡航した秋元さん。帰国後は、出産と家族のブラジル駐在帯同で、二度のキャリア中断を経験しました。

「ITトレンドから取り残されるかも」という不安を抱えながらも、ブラジルでWEB業務を請け負うフリーランスとして働きながら、DXコンサルティング会社の合同会社コンコルディアを設立。現在はCynthialy株式会社で生成AIコンサルタントとして活躍しながら、複業を行う秋元さんに、これまでのキャリアやAIを武器にした仕事、その想いをお聞きしました。

出産や駐在帯同で二度のキャリア中断。WEB業界の経験を活かしキャリアを再開

ーーこれまでのキャリアを教えてください。

国際協力の現場で役立つ技術力をつけたい想いで、新卒ではIT業界に入社しました。ITコンサルやWEB開発を経験した後、JICAボランティアでコロンビアへ渡航。現地では、NGOの同僚と、PC授業の計画作りやデータベース改良などを行いました。

帰国後は、JICA本部にて、組織の知見の活かし方を考えるナレッジマネジメント推進業務を行っていました。

そして、出産を機に退職し専業主婦になりました。ただ、産後3ヶ月で、「働きたい!」という気持ちが溢れてきて。在宅でWEBの仕事を再開しました。

当時はまだリモートワークが普及する前ですが、WEBの仕事は在宅でも引き受けやすく、スキルがあって良かったと思いましたね。その仕事の経験を活かして、デザイン会社のシステム人材として再就職することもできました。

国際協力の仕事に就いていた時代の写真

ーー順調にキャリアを再開されたんですね!

それが、第二子出産後に復職して間も無く、夫のブラジル駐在が決まったんです。帯同ビザのために再び退職せざるを得なくて…。子育てに理解のある会社に再就職させていただいたのに申し訳ない気持ちと、「女性であることとキャリアの両立の難しさ」を痛感しました。

それにIT業界はトレンドの移り変わりが早いので、仕事から離れることで「もう追いつけないかも」という不安も大きかったですね。

ただ、ブラジルでの生活が落ち着くと、また「働きたい」という気持ちが湧いてきました。帯同前に勤めていた会社からWEB開発業務を請け負ったり、「駐妻キャリアnet」の運営メンバーとして、団体の仲間と切磋琢磨したりしながら、フリーランスとして働いていました。

「AIは必ずインフラになる」と確信。AIの知識を深め、日本の長時間労働を是正したい想いで

ーーブラジルから帰国された現在は、どんなお仕事をされていますか?

じつは、ブラジル帯同中に、日本で合同会社コンコルディアを設立しました。

コロナ禍でステイホームが長く、子どものサポートをしながらも、色々と考える時間が取れたんです。同時期、オンラインでサービスを提供する人や、クラウドサービスがたくさんありながらも、うまく活用できていない人の話を聞く機会も増えて。ノーコードツールやローコードツールが普及し、業務に理解がある人がシステム開発を担うシーンも増えそうだとも感じました。そこで、私自身が支援できることがありそうだと考え、キャリアを広げるためにも法人を設立しました。

現在は、代表として、中小企業の経営者の方々に伴走しながら、システム活用による業務改善やデジタルマーケティングのご支援をしています。

また、Cynthialy株式会社に、生成AIコンサルタントとして入社し複業をしています。主に大企業向けに、AIを「知っている状態」から「ROIの高い業務に対し日常的にAIを活用している状態」までを伴走支援しています。

ーーAI関連のお仕事を始めたきっかけを教えてください。

以前、AIを体系的に学びたい想いでリスキリングプログラムを受講したことがあります。そこで、Cynthialy株式会社とご縁があったことが直接のきっかけです。

元々、テクノロジーと国際開発に興味がある人が集うオンラインコミュニティ「ICT4D Lab」で、機械学習を使った難民の移動予測に少し触れたことがあり、AIには触れたことがありました。

当時はまだ、専門家がコーディングする世界で、AIは少し遠い存在に感じていました。けれどもChatGPTが出てきた時、その簡便性には本当に驚きました...!自分がうまく言語化できないことを、壁打ち相手になってもらいながら思考整理できるなど、本当に便利ですよね。「昔のブロードバンド普及期とそっくりだ!」と思い、インターネットがインフラになったように、「AIも絶対にインフラになる」と確信しました。

しばらくは個人でAIを使っていたのですが、体系的に学びたくなり、リスキリングプログラムを受講しました個人利用ではなく、仕事としてお客様に生成AIをご支援していく可能性があるのであれば、生成AIのリスク面もきちんと知りたかったですしね。

プログラム受講後に企業とのミートアップがあり、「学んだ経験をすぐ仕事に活かせそう!」と思えたこともAI業界へ進む決め手になりました。

ーー AIを学ぶ上で、心理的なハードルはありましたか?

全くなかったですね。

IT業界にいたことや、以前の機械学習の経験である程度の仕組みが分かっていたのが大きいかもしれません。 「難しそう」というより、「どうやったら業務改善に活かせるか」「日本の長時間労働を減らすことができるか」という興味の方が圧倒的に強かったです。

実際にAIに触れてみて、進化のスピードには日々驚いています。単なる便利ツールというより、「ナレッジマネジメント(資産の有効活用)」の視点でAIを見るようになりました。JICA時代に携わってきた「知見をどう活かすか」という課題を、AIが解決してくれる。そこにすごく魅力を感じています。

ーー 日本の長時間労働に興味を持たれたきっかけを教えてください。

海外での生活経験が大きく影響しています。

途上国とされるコロンビアでも、新興国と言われるブラジルでも、日本人より自己肯定感や幸福度が高いと感じました。

これは、仕事に使う時間と、家族や友人のために使う時間のバランスが大きく違うことが、一つの要因だと感じています。特にラテンアメリカ圏では、親しい人とのコミュニケーションが、幸福度を支える重要な要素となっているようでした。

日本人は労働時間が長すぎるために、こうした「人とのつながりを深める時間」や「周囲の人を手助けするために使う時間」が削られ、幸福度の低さにも繋がっているように感じますね。

さらに、ワーキングマザーとしての自身の経験もあります。

かつて、夫は夜遅くまで働くのが当たり前という風潮の中で、家事・育児への参加が難しい状況でした。しかしブラジルでの駐在帯同生活を経て、仕事時間を短く、より効率的に行うことを夫自身が意識するようになり、私の仕事時間を尊重し、子どもとの関わりや家事をしてくれる時間が圧倒的に増えるようになりました。

この経験から、「AIによる労働時間の短縮は、日本全体の幸福度を向上させるだけでなく、家庭内の家事・育児の分担といった課題解決にもつながる」と確信しました。生成AIを、そのための「武器」にしたいと考えています。

それに、18年前にコロンビアに住んでいた時と比べると、世界経済における日本の相対的な地位の後退と、日本の生産性の低さも感じています。だからこそ、「AIの専門知識を深め、日本企業に貢献したい」とも思っています。

ーー現在のお仕事で、どのようにAIを活用されていますか?

コンサル業務では、難しい概念をどう伝えたら分かりやすいかという観点で、言葉遣いをAIと一緒に考えたり、資料の構成を練ったりしています。ほかにも、研修で使うデモデータを作成したり、クライアント企業の業界理解などに活用しています。

WEB開発では、コーディングサポートやエラー解決は必須ですね。DXコンサルでは、サービス比較やGAS(Google Apps Script)を書くにあたって、Geminiを使っています。

ーープライベートでも使われていますか?

たくさん使っています!

私は子どもが3人いるんですが、それぞれの年齢や性格、性別をAIに「メモリ登録」してあるんです(笑)兄弟喧嘩のサポートツールになってもらったり、公的機関の情報を調べてレポートにまとめてもらったり。

小学生が喜びそうな早口言葉を考えてもらうところから、英検対策や漢字練習、学年別・性格別の作文執筆の考え方をレクチャーしてもらうなど、学習面でも大活躍です。

生成AIは、キャリアの幅を広げる強力な選択肢。仕事と家庭を、バランス良く両立する人を増やしたい

ーー 将来AIを活用してどんなことを実現したいか、展望を教えてください。

まずはAIで日本企業の生産性を上げて、長時間労働を是正しながらも、グローバルで活躍できる付加価値の高い企業の支援をしたいと考えています。日本には、素晴らしい「暗黙知」がたくさん眠っており、それを資産化するお手伝いもしたいですね。

そして、私自身がそうだったように、出産や介護、パートナーの転勤でキャリアを辞めざるを得なかった方々が、ITとAIの知識を武器に、仕事と家庭をバランス良く両立できるような人材育成にも携わりたいです。 日本も、もっと家族や友人と過ごす豊かな時間が増えてほしい。そのためにAIは大きな力になると思っています。

ーーWomen AI Initiative Japanに興味がある女性へメッセージをお願いします。

生成AIは、どんな職種でも活かせるスキルです。皆さんの過去の職歴や経験を活かしながら、キャリアの幅を広げてくれる強力な選択肢だと思います。

AIを活用すれば、今までかかっていた時間が短縮できて、その分さらに勉強する時間が生まれる。複利的にステップアップできると考えています。 たとえフルタイム勤務が難しくても、たとえば1日5時間の勤務で、今までの8時間勤務以上の価値を生み出すことも可能です。ぜひ小さな一歩から始めてみてください。

そして、Women AI Initiative Japanには、多様なバックグラウンドを持つ女性が集まっています。きっとみなさんのロールモデルになる人がいますし、みなさん自身が誰かのロールモデルになれるはず。ぜひ一緒にスキルアップしていきましょう!

わたしのAIライフスタイル診断

ーー「AIライフスタイル診断」の結果を教えてください。

「しなやかバランサー鹿」でした!

「家庭も仕事も大切にしたい」というのはまさに私の軸なので、バッチリ当たっていましたね。「時間も心の余裕ももっとあったらなぁ...」とも常に思っており、「本当にその通り!」だと感じました(笑)

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執筆・編集  Naoko Kubota